情報システムにおけるデータエンコーディング関数の性質分析
情報システムにおけるデータ変換プロセスを関数としてモデル化し、その関数が単射、全射、全単射のどの性質を満たすかを分析する問題です。これにより、データ変換の特性とシステム設計におけるデータの整合性や可逆性の重要性を理解します。
関数
情報システムにおけるデータ変換プロセスを関数としてモデル化し、その関数が単射、全射、全単射のどの性質を満たすかを分析する問題です。これにより、データ変換の特性とシステム設計におけるデータの整合性や可逆性の重要性を理解します。
情報システムにおけるデータエンコーディング関数の性質分析
ある情報システムでは、システム内部で管理されるユーザーIDは3桁の整数(000から999まで)で表現されています。これらのIDは、外部システムとの連携時に特定の文字列フォーマットにエンコーディングされる必要があります。
以下の2つの関数 $f$ および $g$ について考えます。
関数 $f$: 内部IDの集合 $D = {x \in \mathbb{Z} \mid 0 \le x \le 999}$ から、外部システム用の文字列IDの集合 $C_1 = {\text{“USR-” + } s \mid s \text{ は3桁の数字文字列}}$ への関数を $f(x) = \text{“USR-” + } \text{zero_padding}(x, 3)$ と定義します。ここで $\text{zero_padding}(x, 3)$ は、整数 $x$ を3桁の数字文字列にゼロパディングする関数とします(例: $x=5$ なら “005”)。 例: $f(0) = \text{“USR-000”}$, $f(123) = \text{“USR-123”}$
関数 $g$: 外部システム用の文字列IDの集合 $C_1$ から、別の外部システムで使用されるハッシュ形式のIDの集合 $C_2 = {s \mid s \text{ は4桁の16進数文字列}}$ への関数を $g(y)$ と定義します。 $g(y)$ は、入力文字列 $y$ から “USR-” を取り除いた数字部分(例: “USR-123” から “123”)を数値 $v$ に変換し、その数値 $v$ を16進数文字列に変換した後、4桁にゼロパディングした文字列とします。 ただし、変換後の16進数文字列が4桁を超える場合は、下4桁のみを使用します。(例: $v=65536 \rightarrow 10000_{16} \rightarrow \text{“0000”}$) 例: $g(\text{“USR-000”}) = \text{“0000”}$ $g(\text{“USR-001”}) = \text{“0001”}$ $g(\text{“USR-255”}) = \text{“00FF”}$ $g(\text{“USR-999”})$ は、999を16進数にすると$3E7_{16}$なので、$\text{“03E7”}$。 制約: 集合 $C_2$ の要素は、全ての $0000_{16}$ から $FFFF_{16}$ までの$65536$通りの文字列を指すものとします。
以下の問いに答えなさい。
- 関数 $f$ は単射ですか? 全射ですか? 全単射ですか? それぞれ理由を述べてください。
- 関数 $g$ は単射ですか? 全射ですか? 全単射ですか? それぞれ理由を述べてください。
- 合成関数 $(g \circ f)(x)$ を定義し、その関数が単射であるか、全射であるか、全単射であるかについて、それぞれ理由を述べてください。
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1. 関数 $f$ の性質分析
- ドメイン $D$ の要素数: $|D| = 1000$ (0から999まで)
- コドメイン $C_1$ の要素数: $C_1$ は “USR-000” から “USR-999” までの1000種類の文字列からなるため、$|C_1| = 1000$
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単射性 (Injective): はい、単射です。
- 理由: 異なる入力 $x_1, x_2 \in D$ ($x_1 \neq x_2$) に対して、$f(x_1) \neq f(x_2)$ となることを示します。 $f(x) = \text{“USR-” + } \text{zero_padding}(x, 3)$ と定義されています。 もし $f(x_1) = f(x_2)$ ならば、$\text{“USR-” + } \text{zero_padding}(x_1, 3) = \text{“USR-” + } \text{zero_padding}(x_2, 3)$ となります。 これは $\text{zero_padding}(x_1, 3) = \text{zero_padding}(x_2, 3)$ を意味します。 zero_padding関数は、異なる整数 $x$ に対しては必ず異なる3桁数字文字列を生成します(例: $0 \neq 1$ なら “000” $\neq$ “001”)。 したがって、$\text{zero_padding}(x_1, 3) = \text{zero_padding}(x_2, 3)$ が成り立つのは $x_1 = x_2$ の場合に限られます。 よって、関数 $f$ は単射です。
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全射性 (Surjective): はい、全射です。
- 理由: コドメイン $C_1$ の任意の要素 $y$ に対して、$f(x) = y$ となる $x \in D$ が存在することを示します。 $C_1$ の任意の要素 $y$ は $\text{“USR-” + } s$ の形式で、$s$ は “000” から “999” までの3桁数字文字列です。 この $s$ を整数に変換した値を $x$ とすると、$x$ は $0 \le x \le 999$ の範囲に含まれるため $x \in D$ です。 そして、$f(x) = \text{“USR-” + } \text{zero_padding}(x, 3) = \text{“USR-” + } s = y$ が成り立ちます。 また、ドメインとコドメインの要素数が等しく ($|D| = |C_1| = 1000$)、かつ単射である有限集合間の関数は必ず全射になります。 よって、関数 $f$ は全射です。
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全単射性 (Bijective): はい、全単射です。
- 理由: 関数 $f$ は単射であり、かつ全射であるため、全単射です。
2. 関数 $g$ の性質分析
- ドメイン $C_1$ の要素数: $|C_1| = 1000$
- コドメイン $C_2$ の要素数: $C_2$ は $0000_{16}$ から $FFFF_{16}$ までの全ての4桁16進数文字列を含むため、$|C_2| = 16^4 = 65536$
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単射性 (Injective): はい、単射です。
- 理由: 異なる入力 $y_1, y_2 \in C_1$ ($y_1 \neq y_2$) に対して、$g(y_1) \neq g(y_2)$ となることを示します。 $y \in C_1$ は $\text{“USR-” + } s$ の形式で、$s$ は “000” から “999” の3桁数字文字列です。 $g(y)$ は、この $s$ を数値 $v$ に変換し、$v$ を16進数文字列に変換後、4桁ゼロパディングしたものです。 $0 \le v \le 999$ の範囲では、異なる数値 $v$ は必ず異なる16進数表現になります。また、この範囲の16進数表現は最大でも $3E7_{16}$ (999) であり、4桁を超えることはありません(したがって「下4桁のみを使用」という条件は実際に適用されません)。 よって、$y_1 \neq y_2$ ならば、それに対応する数値 $v_1 \neq v_2$ であり、したがって $g(y_1) \neq g(y_2)$ となります。 よって、関数 $g$ は単射です。
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全射性 (Surjective): いいえ、全射ではありません。
- 理由: コドメイン $C_2$ の全ての要素が $g$ の値域に含まれるわけではありません。 関数 $g$ の値域は、入力 $y \in C_1$ が取りうる値 (0から999) を16進数に変換して4桁ゼロパディングしたものです。 この値域の最大値は $g(\text{“USR-999”}) = \text{“03E7”}$ です。 しかし、コドメイン $C_2$ には例えば $\text{“FFFF”}$ (十進数で65535) のような文字列も含まれます。これらの文字列は、どの $y \in C_1$ を入力しても $g(y)$ の出力として得られることはありません。 また、ドメインの要素数 $|C_1| = 1000$ がコドメインの要素数 $|C_2| = 65536$ よりもはるかに少ないため、全てのコドメインの要素を網羅することは不可能です。 よって、関数 $g$ は全射ではありません。
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全単射性 (Bijective): いいえ、全単射ではありません。
- 理由: 関数 $g$ は全射ではないため、全単射ではありません。
3. 合成関数 $(g \circ f)(x)$ の性質分析
- 定義: $(g \circ f)(x) = g(f(x))$
- まず $f(x) = \text{“USR-” + } \text{zero_padding}(x, 3)$
- 次に $g(f(x))$ は、$f(x)$ の “USR-” を除いた部分($\text{zero_padding}(x, 3)$)を数値 $x$ に戻し、その $x$ を16進数に変換して4桁ゼロパディングする関数です。
- したがって、$(g \circ f)(x)$ は、入力 $x \in D$ (0から999の整数) を直接16進数に変換し、4桁ゼロパディングする関数と定義できます。
- ドメイン: $D = {x \in \mathbb{Z} \mid 0 \le x \le 999}$ ($|D|=1000$)
- コドメイン: $C_2 = {s \mid s \text{ は4桁の16進数文字列}}$ ($|C_2|=65536$)
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単射性 (Injective): はい、単射です。
- 理由: $f$ は単射であり、$g$ も単射であることが既に示されています。 一般に、2つの単射関数の合成関数は単射です。 $(g \circ f)(x_1) = (g \circ f)(x_2)$ と仮定すると、$g(f(x_1)) = g(f(x_2))$。 $g$ が単射なので、$f(x_1) = f(x_2)$。 $f$ が単射なので、$x_1 = x_2$。 よって、合成関数 $(g \circ f)$ は単射です。
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全射性 (Surjective): いいえ、全射ではありません。
- 理由: 合成関数の値域は、コドメイン $C_2$ の全ての要素を網羅しません。 $(g \circ f)(x)$ の出力は、$x$ (0から999) を16進数に変換したものです。その最大値は $x=999$ のときの “03E7” です。 コドメイン $C_2$ には “FFFF” のように “03E7” を超える値が多数存在し、これらが $(g \circ f)(x)$ の値域に含まれることはありません。 また、ドメインの要素数 $|D|=1000$ がコドメインの要素数 $|C_2|=65536$ よりもはるかに少ないため、全射であることは不可能です。 よって、合成関数 $(g \circ f)$ は全射ではありません。
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全単射性 (Bijective): いいえ、全単射ではありません。
- 理由: 合成関数 $(g \circ f)$ は全射ではないため、全単射ではありません。