離散数学

情報システムにおけるユーザーの「同等」関係の分析

情報システムにおけるユーザーグループやアクセス権限の管理において、ユーザー間の「同等」な関係性を「同値関係」としてモデル化します。この問題では、定義された関係が持つ数学的性質(反射性、対称性、推移性)を分析し、それが同値関係であるかを判断することで、システム設計における分類やグループ化の基礎を学びます。

関係

情報システムにおけるユーザーグループやアクセス権限の管理において、ユーザー間の「同等」な関係性を「同値関係」としてモデル化します。この問題では、定義された関係が持つ数学的性質(反射性、対称性、推移性)を分析し、それが同値関係であるかを判断することで、システム設計における分類やグループ化の基礎を学びます。

情報システムにおけるユーザーの「同等」関係の分析

ある情報システムでは、ユーザーの属性に基づいて、ユーザー間の「同等」な関係を定義することがしばしばあります。ここでは、ユーザー間の「プロジェクト参加状況」を基にした関係 $R$ を考えます。

システムのユーザー集合を $U$ とします。各ユーザー $u \in U$ は、1つ以上のプロジェクトに参加しているとします。ユーザー $u_1$ と $u_2$ の間に $u_1 R u_2$ の関係があるのは、「$u_1$ と $u_2$ が少なくとも一つの共通のプロジェクトに参加している」場合と定義します。

以下の問いに答えなさい。

  1. 関係 $R$ が反射的であるか、その理由とともに説明しなさい。
  2. 関係 $R$ が対称的であるか、その理由とともに説明しなさい。
  3. 関係 $R$ が推移的であるか、その理由とともに説明しなさい。
  4. 以上の性質に基づき、関係 $R$ が同値関係であるか、その理由とともに判断しなさい。
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1. 関係 $R$ が反射的であるか

定義: 関係 $R$ が反射的であるとは、任意の $u \in U$ に対して $u R u$ が成り立つことです。

説明と判断: $u R u$ は「ユーザー $u$ とユーザー $u$ が少なくとも一つの共通のプロジェクトに参加している」ことを意味します。 問題文の前提として「各ユーザー $u \in U$ は、1つ以上のプロジェクトに参加している」とあります。したがって、ユーザー $u$ 自身が参加しているプロジェクトは、そのまま $u$ と $u$ が共通して参加しているプロジェクトとなります。 よって、任意のユーザー $u$ は少なくとも一つのプロジェクトに参加しており、そのプロジェクトは $u$ 自身との共通プロジェクトとみなせます。

したがって、関係 $R$ は反射的です。

2. 関係 $R$ が対称的であるか

定義: 関係 $R$ が対称的であるとは、任意の $u_1, u_2 \in U$ に対して、$u_1 R u_2$ ならば $u_2 R u_1$ が成り立つことです。

説明と判断: $u_1 R u_2$ は「$u_1$ と $u_2$ が少なくとも一つの共通のプロジェクトに参加している」ことを意味します。 これは、「$u_2$ と $u_1$ が少なくとも一つの共通のプロジェクトに参加している」ことと全く同じ意味です。どちらの表現も、2人のユーザーのプロジェクト参加状況を比較しているに過ぎません。

したがって、$u_1 R u_2$ が成り立つならば、$u_2 R u_1$ も必ず成り立ちます。 よって、関係 $R$ は対称的です。

3. 関係 $R$ が推移的であるか

定義: 関係 $R$ が推移的であるとは、任意の $u_1, u_2, u_3 \in U$ に対して、$u_1 R u_2$ かつ $u_2 R u_3$ ならば $u_1 R u_3$ が成り立つことです。

説明と判断: $u_1 R u_2$ は「$u_1$ と $u_2$ が少なくとも一つの共通のプロジェクト(例: $P_A$)に参加している」ことを意味します。 $u_2 R u_3$ は「$u_2$ と $u_3$ が少なくとも一つの共通のプロジェクト(例: $P_B$)に参加している」ことを意味します。

このとき、$u_1$ と $u_3$ が必ずしも共通のプロジェクトに参加しているとは限りません。$P_A$ と $P_B$ が異なるプロジェクトであり、$u_2$ が両方に参加しているものの、$u_1$ は $P_A$ のみに参加し、$u_3$ は $P_B$ のみに参加している場合を考えます。

反例:

  • ユーザー集合 $U = {User1, User2, User3}$
  • プロジェクト $P_1 = {User1, User2}$
  • プロジェクト $P_2 = {User2, User3}$
  1. $User1 R User2$: $User1$ と $User2$ は共通のプロジェクト $P_1$ に参加しています。
  2. $User2 R User3$: $User2$ と $User3$ は共通のプロジェクト $P_2$ に参加しています。

しかし、$User1$ と $User3$ は共通のプロジェクトに参加していません。$User1$ は $P_1$ にのみ参加し、$User3$ は $P_2$ にのみ参加しています。 したがって、$User1 R User3$ は成り立ちません。

よって、関係 $R$ は推移的ではありません

4. 以上の性質に基づき、関係 $R$ が同値関係であるか

定義: 関係が同値関係であるためには、以下の3つの性質をすべて満たす必要があります。

  1. 反射的
  2. 対称的
  3. 推移的

判断: 上記1~3の分析により、関係 $R$ は反射的であり、対称的であることが確認されました。しかし、関係 $R$ は推移的ではないことが示されました。

同値関係であるためには、これら3つの性質をすべて満たす必要があるため、一つでも満たさない性質があれば同値関係ではありません。

したがって、関係 $R$ は同値関係ではありません