データ変換パイプラインにおける関数の性質分析
データ変換処理を関数としてモデル化し、その性質(単射、全射、全単射)を分析します。これにより、データ変換が意図通りに情報の損失なく、かつ一意性を保って行われるかを理解します。システム設計におけるデータの流れと整合性の保証について洞察を深めることができます。
関数
データ変換処理を関数としてモデル化し、その性質(単射、全射、全単射)を分析します。これにより、データ変換が意図通りに情報の損失なく、かつ一意性を保って行われるかを理解します。システム設計におけるデータの流れと整合性の保証について洞察を深めることができます。
データ変換パイプラインにおける関数の性質分析
ある情報システムでは、外部から受信したユーザーデータを複数のステージで処理します。各ステージは数学的な関数としてモデル化できます。 データは、$U = {u_1, u_2, \dots, u_{100}}$ (100個の一意なユーザーIDの集合) から始まり、最終的に $P = {p_1, p_2, \dots, p_{100}}$ (100個の一意な処理済みユーザープロファイルの集合) に変換されます。
以下の2つの処理ステージが直列に適用されます。
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ステージA: データクレンジング ユーザーID集合 $U$ から、システムで利用可能な形式のユーザー識別子集合 $M = {m_1, m_2, \dots, m_{80}}$ への関数 $f_A: U \to M$ です。 このクレンジング処理では、一部の無効なユーザーIDは同一の「未処理」識別子 $m_{80}$ にマッピングされることがあります。また、異なる有効なユーザーIDは常に異なる有効な識別子にマッピングされます。具体的には、
- 75個のユーザーIDが、それぞれ異なる75個の有効な識別子 $m_1, \dots, m_{75}$ にマッピングされます。
- 残りの25個のユーザーIDが、すべて無効なユーザーとして単一の識別子 $m_{80}$ にマッピングされます。
- 識別子 $m_{76}, m_{77}, m_{78}, m_{79}$ は、いずれのユーザーIDからもマッピングされません。
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ステージB: プロファイル生成 ユーザー識別子集合 $M$ から、最終的な処理済みユーザープロファイル集合 $P = {p_1, p_2, \dots, p_{100}}$ への関数 $f_B: M \to P$ です。 このステージでは、受け取った識別子からプロファイルを生成しますが、プロファイル生成アルゴリズムの特性上、
- $M$ の要素 $m_1, \dots, m_{75}$ は、それぞれ異なる $P$ の要素 $p_1, \dots, p_{75}$ にマッピングされます。
- $M$ の要素 $m_{76}, \dots, m_{79}$ は、それぞれ異なる $P$ の要素 $p_{76}, \dots, p_{79}$ にマッピングされます。
- $M$ の要素 $m_{80}$ (未処理識別子) は、専用の「デフォルトプロファイル」$p_{80}$ にマッピングされます。
- $P$ の要素 $p_{81}, \dots, p_{100}$ は、どの $M$ の要素からもマッピングされません。
以下の問いに答えなさい。
(1) 関数 $f_A: U \to M$ は単射、全射、全単射のうち、どれに該当しますか?理由も述べなさい。 (2) 関数 $f_B: M \to P$ は単射、全射、全単射のうち、どれに該当しますか?理由も述べなさい。 (3) 合成関数 $f_B \circ f_A: U \to P$ を考えます。この合成関数は単射、全射、全単射のうち、どれに該当しますか?理由も述べなさい。
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(1) 関数 $f_A: U \to M$ の性質
- 定義域: $U$ ($|U|=100$)
- 終域: $M$ ($|M|=80$)
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単射性 (Injection): 異なる入力が異なる出力にマッピングされる性質。
- 問題文より、「残りの25個のユーザーIDが、すべて無効なユーザーとして単一の識別子 $m_{80}$ にマッピングされます」。これは、2つ以上の異なる入力(ユーザーID)が同じ出力($m_{80}$)にマッピングされることを意味します。
- 結論: 単射ではありません。
- 理由: 例えば、$u_a, u_b$ がその25個のユーザーIDに含まれるとき、$u_a \neq u_b$ であるにも関わらず $f_A(u_a) = m_{80}$ かつ $f_A(u_b) = m_{80}$ となるため。
-
全射性 (Surjection): 終域のすべての要素が、定義域の少なくとも1つの要素にマッピングされる性質。
- 問題文より、「識別子 $m_{76}, m_{77}, m_{78}, m_{79}$ は、いずれのユーザーIDからもマッピングされません」。これらの要素は $M$ に含まれるにも関わらず、$U$ のどの要素もマッピングされていません。
- 結論: 全射ではありません。
- 理由: 終域 $M$ の要素である $m_{76}, m_{77}, m_{78}, m_{79}$ に対応する定義域 $U$ の要素が存在しないため。
-
全単射 (Bijection): 単射かつ全射である性質。
- 結論: 単射でも全射でもないため、全単射ではありません。
(2) 関数 $f_B: M \to P$ の性質
- 定義域: $M$ ($|M|=80$)
- 終域: $P$ ($|P|=100$)
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単射性:
- 問題文の記述より、
- $m_1, \dots, m_{75}$ はそれぞれ異なる $p_1, \dots, p_{75}$ に。
- $m_{76}, \dots, m_{79}$ はそれぞれ異なる $p_{76}, \dots, p_{79}$ に。
- $m_{80}$ は $p_{80}$ に。
- すべての異なる $M$ の要素が、異なる $P$ の要素にマッピングされています。
- 結論: 単射です。
- 理由: 任意の $m_x, m_y \in M$ ($m_x \neq m_y$) に対して、$f_B(m_x) \neq f_B(m_y)$ が成立するため。
- 問題文の記述より、
-
全射性:
- 問題文より、「$P$ の要素 $p_{81}, \dots, p_{100}$ は、どの $M$ の要素からもマッピングされません」。これらの要素は $P$ に含まれるにも関わらず、$M$ のどの要素もマッピングされていません。
- 結論: 全射ではありません。
- 理由: 終域 $P$ の要素である $p_{81}, \dots, p_{100}$ に対応する定義域 $M$ の要素が存在しないため。
-
全単射:
- 結論: 全射ではないため、全単射ではありません。
(3) 合成関数 $f_B \circ f_A: U \to P$ の性質
合成関数 $f_B \circ f_A(u)$ は $f_B(f_A(u))$ と定義されます。
- 定義域: $U$ ($|U|=100$)
- 終域: $P$ ($|P|=100$)
-
単射性:
- 関数 $f_A$ が単射ではないため、異なる入力 $u_x, u_y \in U$ で $f_A(u_x) = f_A(u_y)$ となる場合があります(例: 25個のユーザーIDが $m_{80}$ にマッピングされる場合)。
- このような場合、$f_B \circ f_A(u_x) = f_B(f_A(u_x))$ と $f_B \circ f_A(u_y) = f_B(f_A(u_y))$ は同じ値 $f_B(m_{80}) = p_{80}$ になります。
- 結論: 単射ではありません。
- 理由: 異なる入力 $u_x, u_y \in U$ が存在し、それらが合成関数によって同じ出力 $p_{80}$ にマッピングされるため。
-
全射性:
- まず、$f_A$ のイメージ(値域)は $Im(f_A) = {m_1, \dots, m_{75}, m_{80}}$ です。これは $M$ の部分集合であり、$m_{76}, m_{77}, m_{78}, m_{79}$ は含まれません。
- 次に、$f_B \circ f_A$ のイメージは $f_B(Im(f_A))$ となります。
- $f_B({m_1, \dots, m_{75}}) = {p_1, \dots, p_{75}}$
- $f_B({m_{80}}) = {p_{80}}$
- したがって、合成関数 $f_B \circ f_A$ のイメージは ${p_1, \dots, p_{75}, p_{80}}$ です。
- このイメージには、$P$ の要素 $p_{76}, \dots, p_{79}$ および $p_{81}, \dots, p_{100}$ は含まれていません。
- 結論: 全射ではありません。
- 理由: 終域 $P$ のすべての要素が合成関数のイメージに含まれないため(例: $p_{76}$ はどの $u \in U$ からもマッピングされない)。
-
全単射:
- 結論: 単射でも全射でもないため、全単射ではありません。