離散数学

社内ネットワークの設計と冗長性分析

情報システムにおけるネットワーク構成をグラフとしてモデル化し、接続性や冗長性に関する問題を考察します。グラフの基本的な概念(頂点、辺、次数、経路、連結性)を応用することで、効率的かつ堅牢なネットワーク設計の基礎を理解します。

グラフ理論

情報システムにおけるネットワーク構成をグラフとしてモデル化し、接続性や冗長性に関する問題を考察します。グラフの基本的な概念(頂点、辺、次数、経路、連結性)を応用することで、効率的かつ堅牢なネットワーク設計の基礎を理解します。

社内ネットワークの設計と冗長性分析

ある企業の社内ネットワークには、以下の6台のデバイス(サーバーやルーター)が存在します:A, B, C, D, E, F。 これらのデバイスは、ケーブルで相互に接続されています。現在の接続関係は以下の通りです:

  • AとBが接続
  • AとCが接続
  • BとDが接続
  • CとDが接続
  • CとEが接続
  • DとFが接続
  • EとFが接続

このネットワークを無向グラフ $G=(V, E)$ として表現します。

以下の問いに答えなさい。

(1) このネットワークの頂点集合 $V$ と辺集合 $E$ を示しなさい。また、各頂点の次数を計算しなさい。 (2) このネットワークは連結グラフであるか判定し、その理由を述べなさい。 (3) このネットワークに存在する全てのサイクル(閉路)を一つずつ列挙しなさい。 (4) このネットワークにおいて、もしデバイスCが故障した場合、デバイスAはデバイスFと通信可能でしょうか?その理由を、Cを取り除いたグラフの状態に基づいて説明しなさい。 (5) このネットワークが単一障害点を持たないように、既存の辺に加えて新たに1本だけ辺を追加するとしたら、どの2つのデバイス間に接続を追加すべきか、具体的な理由とともに提案しなさい。単一障害点とは、その頂点(デバイス)が故障すると、ネットワークが非連結になる頂点のことです。

解答を見る

まず、ネットワークのグラフを描画します(この解答では図を示せませんが、概念を理解するために描いてみてください)。

(1)

  • 頂点集合 $V$: $V = {A, B, C, D, E, F}$

  • 辺集合 $E$: $E = {{A,B}, {A,C}, {B,D}, {C,D}, {C,E}, {D,F}, {E,F}}$

  • 各頂点の次数:

    • $\mathrm{deg}(A) = 2$ (AはB, Cと接続)
    • $\mathrm{deg}(B) = 2$ (BはA, Dと接続)
    • $\mathrm{deg}(C) = 3$ (CはA, D, Eと接続)
    • $\mathrm{deg}(D) = 3$ (DはB, C, Fと接続)
    • $\mathrm{deg}(E) = 2$ (EはC, Fと接続)
    • $\mathrm{deg}(F) = 2$ (FはD, Eと接続)

(2) 判定: このネットワークは連結グラフです。 理由: どの2つの頂点の間にも経路が存在するためです。例えば、AからFへの経路は A-C-D-F や A-B-D-F などがあります。全ての頂点が相互に到達可能であるため、連結であると言えます。

(3) このネットワークに存在する全てのサイクル(閉路)は以下の通りです。

  • (A, C, D, B, A) または (A-C-D-B-A)
  • (C, D, F, E, C) または (C-D-F-E-C)

(4) 判定: デバイスCが故障した場合、デバイスAはデバイスFと通信可能です理由: デバイスCが故障すると、グラフから頂点Cとそれに接続する辺 ${A,C}, {C,D}, {C,E}$ が取り除かれます。 残ったグラフの接続関係は以下のようになります: $V’ = {A, B, D, E, F}$ $E’ = {{A,B}, {B,D}, {D,F}, {E,F}}$

この状態でも、AからFへの経路として A-B-D-F が存在します。したがって、デバイスCが故障してもAとFは通信可能です。

(5) 単一障害点とは、その頂点を取り除くとネットワークが非連結になる頂点のことです。このネットワークでは、特定の頂点を取り除いても非連結にはなりません。しかし、単一の辺に注目すると、例えば辺${B,D}$が切断された場合、A-Bの経路が失われ、AとDの間で直接的な通信経路が失われます(A-C-Dの経路は残るため、AとDは依然として通信可能)。 この質問では「単一障害点(頂点)」について問われているため、現在のグラフでは単一障害点(切断点)は存在しません。どの頂点を取り除いても、残りの頂点は連結を保ちます。

しかし、もし問題が「単一の辺(リンク)が故障するとネットワークが分断される(橋となる)ような状況を避ける」という意味で冗長性を高めることを目的としている、または全体的な耐障害性を高めるという意味であれば、以下の提案が考えられます。

既存のグラフは比較的連結性が高く、切断点(頂点)は存在しません。例えば、もしDが故障した場合、A-Bは接続されますが、AからFへの経路は失われます(C-E-Fは残るため)。しかし、AとFが通信不能になるわけではありません。

より堅牢なネットワークを構築するために、ボトルネックとなる部分や、特定の経路に負荷が集中する可能性のある部分を強化することが考えられます。 例えば、サイクルが少ない部分や、多くの経路が特定の頂点を通過する部分に着目します。 現在、AとBの接続はA-B-Dという経路の一部であり、CとEはC-E-Fという経路の一部です。

追加する辺の候補としては、例えばAとFを接続する辺が挙げられます。 理由:

  • AとFはネットワークの両端に位置しており、現在の経路はC-DまたはB-Dを経由する必要があります。
  • AとFを直接接続することで、A-C-D-FやA-B-D-Fといった既存の経路に加え、A-Fという最短経路ができます。
  • これにより、CやDといった中央のデバイスに障害が発生した場合でも、AとF間の通信の冗長性が大幅に向上します。例えば、デバイスCやDが同時に故障するような極端なケースでも、AとF間の直接通信経路があれば、ネットワークの分断を防ぎやすくなります。
  • これにより、ネットワーク全体としての耐障害性、特に遠隔地のデバイス間の通信の信頼性が向上します。

(他の有力な候補としては、BとEを接続したり、AとDを接続したりすることも考えられますが、AとFを接続することは、ネットワークの「端」同士を結び、全体の通信パスの多様性を高める点で有効です。)