離散数学

社内システムにおける関係の分析

社員間の部署移動の履歴や、システム間の依存関係など、情報システムでよく見られる「関係」の概念を扱います。具体的な例を通じて、関係の性質(反射律、対称律、反対称律、推移律)を理解し、同値関係や順序関係の判別を行います。

関係

社員間の部署移動の履歴や、システム間の依存関係など、情報システムでよく見られる「関係」の概念を扱います。具体的な例を通じて、関係の性質(反射律、対称律、反対称律、推移律)を理解し、同値関係や順序関係の判別を行います。

社内システムにおける関係の分析

あるIT企業では、社内の様々なシステムや社員間の関係性を分析し、効率的な運用や組織構造の理解に役立てたいと考えています。離散数学における「関係」の概念を用いて、以下のシナリオを考察してください。

シナリオ1:システム間の接続関係 社内には複数のシステム S = {S1, S2, S3, S4} があり、それぞれのシステムがデータ連携のために相互に接続されている場合があります。この接続関係Rを、順序対 (Si, Sj) の集合として定義します。 R = {(S1, S1), (S1, S2), (S2, S1), (S2, S2), (S3, S3), (S3, S4), (S4, S3), (S4, S4)}

  1. 関係 R が以下の性質を持つかそれぞれ判断し、理由を述べてください。 a. 反射律 b. 対称律 c. 反対称律 d. 推移律
  2. 関係 R は同値関係ですか? 同値関係である場合は、同値類を全て求めてください。

シナリオ2:プロジェクトにおけるタスク依存関係 あるプロジェクトでは、タスク T = {T1, T2, T3, T4, T5} があり、タスクの実行順序に依存関係が存在します。関係 D を「タスク Ti はタスク Tj の前に完了する必要がある、またはTiとTjは同じタスクである」という順序対 (Ti, Tj) の集合として定義します。 D = {(T1, T1), (T1, T2), (T1, T3), (T1, T4), (T1, T5), (T2, T2), (T2, T3), (T2, T4), (T2, T5), (T3, T3), (T3, T4), (T3, T5), (T4, T4), (T4, T5), (T5, T5)}

  1. 関係 D が以下の性質を持つかそれぞれ判断し、理由を述べてください。 a. 反射律 b. 対称律 c. 反対称律 d. 推移律
  2. 関係 D は順序関係ですか? 順序関係である場合は、最小元、最大元、極小元、極大元を全て求めてください(存在しない場合は「なし」と記述)。
解答を見る

解答と解説

各シナリオごとにステップバイステップで解説します。

シナリオ1:システム間の接続関係 関係 R は集合 S = {S1, S2, S3, S4} 上で定義されています。 R = {(S1, S1), (S1, S2), (S2, S1), (S2, S2), (S3, S3), (S3, S4), (S4, S3), (S4, S4)}

  1. 関係 R の性質 a. 反射律: 定義: 任意の x ∈ S に対して、(x, x) ∈ R である。 判断: S のすべての要素 (S1, S1), (S2, S2), (S3, S3), (S4, S4) が R に含まれています。 結論: 反射律を持つ。

    b. 対称律: 定義: 任意の x, y ∈ S に対して、もし (x, y) ∈ R ならば (y, x) ∈ R である。 判断: * (S1, S2) ∈ R であり、(S2, S1) も R に含まれています。 * (S3, S4) ∈ R であり、(S4, S3) も R に含まれています。 * (x, x) の形の順序対は自動的に条件を満たします。 結論: 対称律を持つ。

    c. 反対称律: 定義: 任意の x, y ∈ S に対して、もし (x, y) ∈ R かつ (y, x) ∈ R ならば x = y である。 判断: * (S1, S2) ∈ R かつ (S2, S1) ∈ R ですが、S1 ≠ S2 です。 * (S3, S4) ∈ R かつ (S4, S3) ∈ R ですが、S3 ≠ S4 です。 結論: 反対称律を持たない。

    d. 推移律: 定義: 任意の x, y, z ∈ S に対して、もし (x, y) ∈ R かつ (y, z) ∈ R ならば (x, z) ∈ R である。 判断: * (S1, S2) ∈ R かつ (S2, S1) ∈ R ならば (S1, S1) ∈ R。これは R に含まれます。 * (S2, S1) ∈ R かつ (S1, S2) ∈ R ならば (S2, S2) ∈ R。これは R に含まれます。 * (S3, S4) ∈ R かつ (S4, S3) ∈ R ならば (S3, S3) ∈ R。これは R に含まれます。 * (S4, S3) ∈ R かつ (S3, S4) ∈ R ならば (S4, S4) ∈ R。これは R に含まれます。 * その他の組み合わせ(例:(S1, S1) ∈ R かつ (S1, S2) ∈ R ならば (S1, S2) ∈ R)も全て条件を満たします。 結論: 推移律を持つ。

  2. 関係 R は同値関係ですか? 同値関係であるためには、反射律、対称律、推移律の全てを満たす必要があります。 関係 R は反射律、対称律、推移律の全てを持つため、同値関係であると言えます。

    同値類: 同値類 [x] は、x と関係 R を持つすべての要素 y の集合 {y ∈ S | (x, y) ∈ R} です。

    • [S1] = {y ∈ S | (S1, y) ∈ R} = {S1, S2}
    • [S2] = {y ∈ S | (S2, y) ∈ R} = {S1, S2}
    • [S3] = {y ∈ S | (S3, y) ∈ R} = {S3, S4}
    • [S4] = {y ∈ S | (S4, y) ∈ R} = {S3, S4} したがって、同値類は {{S1, S2}, {S3, S4}} です。

シナリオ2:プロジェクトにおけるタスク依存関係 関係 D は集合 T = {T1, T2, T3, T4, T5} 上で定義されています。 D = {(T1, T1), (T1, T2), (T1, T3), (T1, T4), (T1, T5), (T2, T2), (T2, T3), (T2, T4), (T2, T5), (T3, T3), (T3, T4), (T3, T5), (T4, T4), (T4, T5), (T5, T5)}

  1. 関係 D の性質 a. 反射律: 定義: 任意の x ∈ T に対して、(x, x) ∈ D である。 判断: T のすべての要素 (T1, T1), (T2, T2), (T3, T3), (T4, T4), (T5, T5) が D に含まれています。 結論: 反射律を持つ。

    b. 対称律: 定義: 任意の x, y ∈ T に対して、もし (x, y) ∈ D ならば (y, x) ∈ D である。 判断: (T1, T2) ∈ D ですが、(T2, T1) は D に含まれていません。 結論: 対称律を持たない。

    c. 反対称律: 定義: 任意の x, y ∈ T に対して、もし (x, y) ∈ D かつ (y, x) ∈ D ならば x = y である。 判断: 関係 D は「タスク Ti はタスク Tj の前に完了する必要がある、またはTiとTjは同じタスクである」と定義されています。もし (Ti, Tj) ∈ D かつ (Tj, Ti) ∈ D で Ti ≠ Tj であるとすると、Ti が Tj の前に完了し、かつ Tj が Ti の前に完了するという矛盾が生じます。したがって、(x, y) ∈ D かつ (y, x) ∈ D が成り立つのは x = y の場合に限られます。 結論: 反対称律を持つ。

    d. 推移律: 定義: 任意の x, y, z ∈ T に対して、もし (x, y) ∈ D かつ (y, z) ∈ D ならば (x, z) ∈ D である。 判断: * 関係 D はタスクの先行関係を表しています。もし Ti が Tj の前に完了し、かつ Tj が Tk の前に完了するなら、Ti は Tk の前に完了します。 * 例: (T1, T2) ∈ D かつ (T2, T3) ∈ D ならば (T1, T3) ∈ D。これは D に含まれます。 * 例: (T1, T3) ∈ D かつ (T3, T5) ∈ D ならば (T1, T5) ∈ D。これは D に含まれます。 * すべての組み合わせでこの条件が成り立ちます。 結論: 推移律を持つ。

  2. 関係 D は順序関係ですか? 順序関係であるためには、反射律、反対称律、推移律の全てを満たす必要があります。 関係 D は反射律、反対称律、推移律の全てを持つため、順序関係である(具体的には半順序関係)と言えます。

    最小元、最大元、極小元、極大元:

    • 最小元: 任意の y ∈ T に対して (x, y) ∈ D となる x ∈ T。 T1 はすべてのタスクの前に完了する必要がある(または同じ)。実際、(T1, y) がすべての y ∈ T について D に含まれます。 結論: 最小元 = T1

    • 最大元: 任意の y ∈ T に対して (y, x) ∈ D となる x ∈ T。 T5 はすべてのタスクの後に完了する(または同じ)。実際、(y, T5) がすべての y ∈ T について D に含まれます。 結論: 最大元 = T5

    • 極小元: x ∈ T であり、x と異なるいかなる要素 y ∈ T も (y, x) ∈ D とならない(つまり、x の前に完了するべき y が存在しない)。 最小元が存在する場合、それは唯一の極小元でもあります。 結論: 極小元 = T1

    • 極大元: x ∈ T であり、x と異なるいかなる要素 y ∈ T も (x, y) ∈ D とならない(つまり、x の後に完了するべき y が存在しない)。 最大元が存在する場合、それは唯一の極大元でもあります。 結論: 極大元 = T5