離散数学

冗長性を考慮したネットワーク設計と連結性の評価

この問題では、企業のデータセンターにおけるサーバーネットワークの設計を考えます。ネットワークの耐障害性を確保しつつ、ケーブル敷設のコストを最小化するために、グラフ理論の観点から最適な構成を分析します。

グラフ理論

この問題では、企業のデータセンターにおけるサーバーネットワークの設計を考えます。ネットワークの耐障害性を確保しつつ、ケーブル敷設のコストを最小化するために、グラフ理論の観点から最適な構成を分析します。

冗長性を考慮したネットワーク設計と連結性の評価

ある企業のデータセンターには、N (N ≥ 3) 台のサーバーがあります。これらのサーバー間は、ネットワークケーブルで直接接続されることがあります。ここで、以下の条件を考慮してネットワークを設計します。

  1. 接続性: 各サーバーは少なくとも1つの他のサーバーに接続されている必要があります。
  2. 到達性: 任意の2つのサーバー間は、直接接続されていなくても、他のサーバーを経由して通信できる必要があります(ネットワークは連結である必要があります)。
  3. 耐障害性: ネットワークの耐障害性を高めるため、任意の1本のケーブルが切断されても、依然としてネットワーク全体が連結である必要があります。
  4. コスト効率: ケーブルのコストを最小限に抑えたいので、使用するケーブルの総本数はできるだけ少なくしたいです。

このとき、N台のサーバーを頂点、ケーブルを辺とする単純グラフ(多重辺や自己ループを持たないグラフ)を考えます。

以下の問いに答えなさい。

(1) N台のサーバーが上記条件1, 2, 3, 4をすべて満たすようにネットワークを設計する場合、最小で何本のケーブルが必要になりますか? Nを用いて答えなさい。

(2) N=5 の場合、(1)で求めた最小本数のケーブルで上記条件を満たす具体的なネットワーク構成を1つ示しなさい。グラフの頂点を V = {S1, S2, S3, S4, S5} とし、辺の集合 E を列挙して表現してください。また、その構成が条件3(任意の1本のケーブルが切断されても連結性が保たれる)を満たすことを簡単に説明しなさい。

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(1) 最小ケーブル本数の導出

条件をグラフ理論の用語に置き換えて考えます。

  • N台のサーバーはN個の頂点 $V = {S_1, S_2, \dots, S_N}$ を表します。
  • ネットワークケーブルは辺 $E$ を表します。
  1. 接続性: 各サーバーは少なくとも1つの他のサーバーに接続されている ($d(v) \ge 1$ for all $v \in V$)。
  2. 到達性: ネットワークは連結である必要があります。
  3. 耐障害性: 任意の1本のケーブルが切断されても連結性が保たれる。これは、グラフが2辺連結 (2-edge-connected) であることを意味します。つまり、グラフに橋(ブリッジ)が存在しないということです。
  4. コスト効率: 使用するケーブルの総本数 $|E|$ を最小化します。

まず、条件3(2辺連結であること)を満たすためには、各頂点の次数が最低でも2である必要があります ($d(v) \ge 2$ for all $v \in V$)。なぜなら、もし次数が1の頂点があった場合、その頂点につながる唯一の辺を切断すると、その頂点は他の部分から孤立し、グラフは非連結になってしまうからです。

すべての頂点の次数が2以上であるN個の頂点を持つグラフの中で、辺の数が最小となるのは、閉路グラフ(サイクルグラフ)$C_N$ です。 $C_N$ は、N個の頂点とN本の辺から構成され、各頂点の次数は2です。例えば、$S_1 - S_2 - \dots - S_N - S_1$ のように、頂点が環状に接続されたグラフです。

この $C_N$ が条件1, 2, 3, 4を満たすことを確認します。

  • 条件1 (接続性): $C_N$ では各頂点の次数が2なので、$d(v) \ge 1$ を満たします。
  • 条件2 (到達性): $C_N$ は連結グラフです。
  • 条件3 (耐障害性): $C_N$ は任意の1本の辺を取り除いても連結性を保ちます。N ≥ 3 の場合、1本の辺を取り除くと、N個の頂点とN-1本の辺を持つパスグラフになりますが、これはまだ連結です。したがって、$C_N$ は2辺連結です。
  • 条件4 (コスト効率): N個の頂点を持ち、各頂点の次数が2以上であるグラフの中で、辺の総数が最小となるのは、辺の数がNである$C_N$です。N個の頂点を持つ連結グラフで、橋を持たない(2辺連結)グラフの最小辺数はNです。

したがって、最小で必要なケーブルの総本数は N本 です。

(2) N=5 の場合の具体的な構成と説明

N=5の場合、(1)で求めた最小本数は 5本 です。 この条件を満たす具体的なネットワーク構成として、$C_5$ (5頂点の閉路グラフ) を考えます。

頂点の集合: $V = {S_1, S_2, S_3, S_4, S_5}$ 辺の集合: $E = {{S_1, S_2}, {S_2, S_3}, {S_3, S_4}, {S_4, S_5}, {S_5, S_1}}$

この構成が条件3(任意の1本のケーブルが切断されても連結性が保たれる)を満たすことを説明します。

このネットワークは環状に接続されており、各サーバーはちょうど2つの他のサーバーに接続されています。 例えば、辺 ${S_1, S_2}$ が切断された場合を考えます。残りの辺は ${{S_2, S_3}, {S_3, S_4}, {S_4, S_5}, {S_5, S_1}}$ となります。 この残ったグラフは $S_1 - S_5 - S_4 - S_3 - S_2$ というパス(経路)を形成します。このパスはすべてのサーバーを含み、依然として連結です。 同様に、どの1本の辺を切断しても、残りのN-1本の辺がN個の頂点の間でパスを形成し、すべてのサーバーが互いに到達可能であるため、ネットワークは連結状態を保ちます。 この性質により、この$C_5$の構成は条件3を満たします。